こころの詩
若い頃からの友である、土佐出身の詩人にしうちさとしさんの詩を、敬意をもって紹介します。ともに味わいたく思います。
弁護士でもあるにしうちさとしさんは、「宇宙の雫」、「ひまわり」、「ねえ おかあさん」、「たびだち」という詩集を遊人工房からだしておられます。
会ってお話をうかがうたびに、生きることについての真摯さ、こころ優しさにうたれます。
短歌集
第1期
9 new
10 new(これで513首すべてアップロードできました)
第2期
13 new
詩
落葉
木枯に
欅の葉が
散りました
ほとんどは
母なる樹の
根元に散り敷き
春の芽生えの
養分となりました
何枚かは
林の奥に
運ばれ
冬籠りの虫達の
おふとんになりました
何枚かは
川の流れに
運ばれ
海に着いて
プランクトンの
糧になりました
一枚は
隣の家の
庭に落ち
少女に拾われて
教科書の
栞になりました
欅の葉
一枚一枚にも
それぞれ
さまざまな
運命があり
大いなる
いのちの循環のなかで
それぞれが
それなりに
全て
意義があります
私達
ひとりひとりの
人生も
それぞれが
それなりに
全て
意義があります
だのになぜ
人だけが
幸せな人生
不幸な人生などと
自ら評価し
自ら苦しむのでしょうか
ねがい
一 往く春の雨に
なりたい
俯いて
遠ざかる
あなたの肩を
そっと
そっと優しく
たたきたい
二 初夏の風に
なりたい
しょんぼりと
立ちつくす
あなたの髪を
軽く
軽く静かに
揺らしたい
三 初秋の海に
なりたい
夢破れ
閉じかけた
あなたの胸に
静かに
静かに波を届けたい
四 冬の夜の星に
なりたい
滲んでは
頬つたう
あなたの涙
澄んだ
澄んだ光を
宿したい
(ことし2016年8月に、お手渡しいただいた詩です。
この詩に、大竹くみさんが曲をつけたものが、CDとなりました。「ねがい 大竹くみ作品集」EXTON OVCL00649です)
いただきもの
父からは
ほほえみを
母からは
いつくしみを
もらった
祖父からは
矜持を
祖母からは
忍耐をもらった
故郷の空からは
自由を
海からは
おおらかさをもらった
私も
いつか
だれかに
なにか
あげられればいいな
生きてゆく
ちからになるものを
さくら
ことしもまた
さくらがさいた
じっと
みつめているうちに
ほっと
かたのちからがぬけた
そらってこんなに
あおかったんだとおもった
さくらはいいな
ほんとにいいな
ながい
じんせいのうち
いちどでいいから
さくらのように
ひとを
ほっと
できたらいいな
(なんねんもまえにメールでいただいた詩です。2011年は震災で花を愛でる余裕もありませんでした。たしかにわが家の庭の山桜も素朴な花をつけたのでしたが)